目をこれでもか、というくらい見開いたセブは。
急に、膝を折って、頭と両手を地に突いた。
俗に言う、土下座だ。
[やめて、セブさん。そんなことをしないで]
[申し訳ありませんでした…!]
頭はあげない。
ずっと地べたに這いつくばって、動く様子は少しも見えなかった。
[あたしはセブさんがなにに対して謝罪をしているのか、分かっている。分かった上で言っている。その顔をあげなさい]
ピクリと反応した上体は、ゆっくりとあたしの方に向いた。
[本当に…]
[あのね。言っておくけど、怒っていないから。だから謝罪は望んでいないの。どうせマークと共にホテルからあたしを置いて行ってそれから連絡を取らなかったことを申し訳ないと思っているのでしょう]
セブさんの唇は震えて。
[…おっしゃる通りです]
そう一言呟いた。
[あたしは言ってる。謝罪なんて必要ない。それとも後悔しているの?マークについて行ったことを]
[………]
ほら、やっぱり。
後悔なんてしていないんじゃない。
はっ、と思わず笑ってしまった。
[これでよかったって今でも思っているんでしょ。なら、見せかけの謝罪なんてもっと要らないわ]
[でもっ…!]
[何事だ]
扉の向こう側から地響きのするような声音に、セブさんが固まった。



