時というものはあっという間に過ぎていく。
「あともう少しですね」
佐々木さんのその言葉にあたしは小さく頷いた。
時刻は18時45分。
マークが来るまで、あと15分。
「…和佳菜、あの人が無理やり連れ去ろうとしても後悔すんなよ」
「しないし、させない」
アメリカに帰ってしまったとしても、あたしは話すことに意味があると思っていた。
あたし達はいつまで経っても進めていないでしょう?
瑞樹が冷ややかな目であたしを見たけど、そんなもの気にも止まらなかった。
やがて時は19時となる。
「…来ないですね」
時計の短針が約束の時刻からぐるりと一周すると、佐々木さんがはあとため息をついた。
「マークはよく約束を破るのよ」
「そうでしたか?わたくし達には時間厳守を言いつける人でしたけど。彼自身も守っていましたし」
「…じゃあ、あたしの優先順位が低かったってことね」
今更ながらにそんなことにも気付いてしまう。
やっぱりあたしはマークにとってはどうでもいい人だったのだろう。
「それは、違うと思うけど」
瑞樹が一言呟いた。
「違うって?」
「マークサマはさ、和佳菜が1番大事だったはずだよ」