「お世話になりました」


ぐっと頭をさげた。


「本当にここでいい?向こうにつくまで付いていくけど」


心配性を発揮した綾が、眉根をさげたけれど、あたしは首を横に振った。


「大丈夫。綾も仁も仕事があるでしょう?ここまで車まで出してくれてありがとう」


銀深会関西本部の所有する車は少ないらしく、そんな車で駅まで送ってくれたことに感謝するに決まっている。


「いや、佐々木さん、元気そうでよかったな」


実は駅に着く前に佐々木さんのいる病院に寄ってもらったのだ。


仁や綾とも佐々木さんは話したけれど、細かいことは2人でと言ってそうそうにふたりきりになったのだった。



『くれぐれも騒ぎに起こさないように』


そう言われたあたしは笑うしかない。


色々やらかしてきた自覚はあるから。


『静かにしています』


そう約束したことを思い出した。




「ええ、あと2日はそっちでお世話になるみたい。退院したら関西本部に寄るって言っていたから、分かっておいてね」


「ん、りょーかい」


それから綾は仁の膝を突いて。


「仁、ずっとだんまりはやめろよ。しばらく会えなくなるんだから、な」


昨日の夜以来、なんだか気まずくてあまり話さないままここまできてしまった。


目を伏せたまま変わらず喋らない仁に、綾はため息をついた。


ここは駅のロータリーだから、あまり長居はできないし。


「いいわよ。ありがとう、綾。じゃあね、仁。真城さん、ありがとうございました」


運転してくれた真城さんにも頭を下げて、軽いリュックを背負って背を向けて歩き出すと。



「和佳菜!」



名残惜しそうに仁があたしの名前を呼んだ。