はっと息を呑んだ貴方にあたしは自重気味に笑った。
そうではなくあってほしいと、あたしは願っている。
今でもずっと願っている。
だけど時折あたしをこうやって支配するの。
『仁が欲しかったのは、あんたじゃない。マークの元恋人だ』
あたしに囁くの、怖いくらい、静かに。
許したと、思っていた。
過去のことだ、と忘れて。
消したはずだったのだ。
違ったみたいね。
あたしは少しも許せていないのだ、仁のことを。
自分の感情に疎いあたしは、まだまだロボットちゃんだ。
「もし貴方があたしの味方だって思っているなら、居場所を返して。あたし達を救い出してくれたことは、本当に感謝しているわ。だけど、貴方のその言葉だけは信用できない」
貴方にだけは言われたくなかったな。
俯く仁はあたしの顔なんか見ない。
あたしは笑った。
もう、嫌。
逃げたい、辞めたい、楽になりたい。
早く大阪から、銀深会から、仁から。
逃げてしまいたい。
「ふとん用意してくれてありがとう。あたし、部屋に帰るね」
あたしは上手く笑えていたでしょうか?
その笑顔は本物にそっくりだったでしょうか?
あたしは今。
どんな顔をしているでしょうか。
背中が急に守られるように暖かくなった。
「ごめん。だから泣かないで」
絶対に泣いたりなんかしていない。
していないの、していない。