「吉野、真城。今いるのは2人か?」
涙が出て止まらないあたしを抱き寄せながら、仁がそう聞いた。
「関西の幹部はこれくらいです。今日は非番なんで、人が少ないんですよ」
吉野さんの声が聞こえてきて人の少なさに小さく喜んだ。
多くの人に会いたくはない。
大阪に来ている今、正直Margaretより無防備であることは事実なのだ。
青山が何かしてくるとは考えにくいが、おじいさまに見つかってしまっては、あたしの実家行きが決定してしまう。
会う人は少ない方がいい。
照史がおじいさまに報告する前に、ここを離れなくてはいけないのだし。
銀深会とは無関係なMargaretに。
「仁、もう大丈夫」
涙を拭ってあたしは笑う。
貴方に会える日はもうきっと来ないかもしれない。
マークの迎えが近いのではないか。
そう、思っているから。
根拠もなしにこんなことを思っているわけではない。
瑞樹や佐々木さん達が最近何やら忙しく動いていることをあたしは知っている。
佐々木さん達が追っている人のことを抜いても、分かり易すぎる。
だから、あたしは思ってしまった。
ああ、これは心の準備をしろと、そういうことなのだと。
出逢えたことはきっと奇跡。
何年かかっても必ず、貴方のもとに帰るから。
今はきっと最後の貴方といる時間を大切にしたい。
泣いてばかりじゃもったいないでしょう?
明日なんてあっという間にくる。
「…和佳菜」
「平気。今日くらい、笑って、幸せでいたいわ。ねえあたし、どこの部屋を使っていいの?せっかくだもの、関西本部の銀深会を楽しみたいわ」
ねえ、そんなに悲しそうな顔をしないで?
あたしは悲しくなんかない。
貴方さえ、あたしの味方なら。
あたしはずっと笑っていられる。
ニッて、笑って見せたら、痛いくらいに抱きしめられた。



