本当に、何しているのだろう、あたし。
なんでもない話のはずが、とんでもない話を聞き出してしまった。
いろいろなワードが頭の中に浮かぶ。
異母兄弟、堅物、快活…?
「…佐々木さんって、あまり快活なイメージは無いのだけど」
「昔は明るかったんですよ?友達も多く居ました。だけど、弟の一件のせいで、わたくしはなくなく日本に来たのです」
「え?日本に来た?」
はっとした佐々木さんが、忘れていました、と笑った。
「わたくしは日本人ですが、アメリカで生まれたので、二重国籍者だったんです。最も、18のときに日本国民になることを選んだので、日本国籍しかありませんが」
「じゃあ、それまではアメリカに?」
彼は頷いて、そうです、と答えた。
「わたくしが17になるときに、二つ下の弟が母を殺して捕まったのです。わたくし自身の母は早くに死に、弟の母_____わたくしの育ての母_______は父とは離婚しており、母方の祖父母ももう既に故人でして、わたくしには頼る人などおりませんでした」
「幸いなことにわたくしの両親は日本人で、10の時までは一緒に暮らしておりましたので、少しなら日本語は理解できました。弟から逃げるように日本に渡りました」
「アメリカは広いから、ほかの地域に行ってもいいのでは?」
「アメリカは広いですけど、そこにとどまる選択肢は無かったですね。アメリカの広さが逆にわたくしは怖かった」
「怖い?」
「広いが故に、どこからその話が漏れるか分からないから怖いんですよ。もしかしたらと考えると、ずっと恐ろしく感じてしまう」
言葉の違う日本なら…そう思ったらしい。