病院という白い箱の中から、僅かに開いている窓から、外を眺めた。
佐々木さんはあの後、誰かが通報した救急車によって運ばれ、あたしはその付き添いをしていた。
警察関係者にも色々と話したけれど、物的証拠が見つからないと言っていたあたり、犯人が見つかる気配は無さそうだった。
彼らを舐めていたわけではない。
おごりがあったわけでもない。
あの時は話に必死で。
まさか、シャンデリアが落ちてくるとは微塵も想像できなかった。
「見つかるかな」
「…可能性は低いですね。顔もはっきり知っているわけではないので」
「…」
「分かっていて行かせたのも知っていますから」
白い目がこちらに向いて、もう笑うしか無かった。
「……本当、佐々木はみくびれないわね」
「彼らの気持ちを優先させたかったのでしょう?」
「知っているなら、彼らに言わないで頂戴ね」
「承知しています」
「良かった」
あの後すぐに佐々木さんのLINEから特徴などを送ったけれども、もう手遅れだと気が付いてはいた。
佐々木さんは本当になんでもあたしのことを見通してしまう。
不思議な人だ。
「保険証を持っていって良かったですね」
「ええ、偽物を持っていなくてよかった」
「…佐々木さん、偽物持っているんですか?」
「ええ。それくらいは、普通ですよ。ただ、万が一警察のお世話になることも考えられたので、持っていってよかった」
白い部屋の中で、優美に笑う佐々木さんがやっぱり闇の中の人なんだ、って思い知った瞬間だった。
「佐々木さん、ごめんなさい」
いきなり立ち上がったあたしに佐々木さんはふわりと優しく笑った。
「和佳菜様。貴女の謝罪の意味はよく分かっています。分かっている上で言います。わたくしは貴女を守れてよかった」
「でもそれは責任感からだっていうことだって、あたし、ちゃんとわかってるんです。マークのものであるあたしに傷をつけたくはないから…」
語尾がどんどん小さくなる。
最後の方は聞こえたか怪しかった。
すると佐々木さんはキョトン、としてから。
「なに言っているんですか?そんなわけないじゃないですか」
と、やや食い気味に喋り始める。
「和佳菜様。わたくしは和佳菜様がマーク様の恋人であろうがなかろうが、貴女様を大切に思うことに変わりはありません」



