「…変わらない…?」
「和佳菜様はご存知ないとは思いますが、私はあそこで働いていた人間です」
「知っているわよ?」
あそこ、がどこだか認識は出来ているつもりだ。
だけれども、佐々木さんはいいえ、と首を横に振って。
「知らないはずです。貴女の言っているあそことわたくしの言っているあそこは少し違う」
「…マークのところで働いていたのではないの?」
繋いでいる手に、繋いでいないもう片方の手を乗せて、包み込んで。
「わたくしはマークの本家の庭師です」
「にわ、庭師…?」
庭師とは、あれでしょう。
木を切ったり、綺麗な形に揃えたりして、庭を美しく保つ人のこと。
確かにマークの家の庭は綺麗だったけれども。
なんだか、頭が、追いつかない…。
「わたくしは…マーク様に心酔しているわけではありません。坊っちゃんも違います。わたくし達はある人を探しているのです。その人と貴女はあそこでいつも会っていた」
「人を…?」
人を探しているの?
あたしはその人と会ったことがあるの?
それに。
「マークの僕漢字ではないの?」
「表面上の立ち位置はそうなります。坊っちゃんもわたくしもマーク・スティーブンの情報屋です。目的が少々違うだけです」
「…その人を探すため、なの…?」
深くうなずく佐々木さんに、もうどのように接したら良いのか分からなくなった。
「坊っちゃんが貴女を連れてきたときは驚きました。まさか、Margaretで貴女様に逢えるとは思っていなくて。着飾った貴女ばかり見ていたので、坊っちゃんに言われるまで気付きませんでした」
「…え、じゃあ今まで何故」
《そのことを言わなかったの?》
そう言おうとした瞬間に、口を噤んだ。
代わりに。
「佐々木さん!」
そう叫んで、掴んだその手を引きながら右に一歩大きく踏み出す。
ガッシャン…!!!
綺麗に飾られたシャンデリアが真上から降ってきた。
頭に直撃は免れたものの。
「佐々木さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫で、す…っ!」
「大丈夫じゃない、じゃないですか!」
肩から背中にかけて破片が刺さったようで、小さく呻いている。
着ていた服から血が滲み出るのをみて、目眩がした。
報復だ、とすぐに分かった。
これが、青山の力なんだ。
“ 青山に喧嘩を売って出て行った奴が家に帰ってきたことはない ”
その噂により真実味が帯びた。
あたし、この前も佐々木さんに怪我をさせたのに。
本当に何をしているんだろう?
なんで今日もまた怪我させているんだろう。
あのシャンデリアが落ちてくるの、あたし見えたでしょう?
なんでこれしか出来なかったの?
もっと出来ることがあった。
前弓でつかれた場所も、完治したわけではないはずなのに。
我がままを言って、大阪に呼んで。
「あたしがっ、あたしが…当たれば良かった…!」
「そんなこと言うんじゃねえよ」
ふわりと肩から優しく抱きしめられた。
この香りは。
「…どうして、」
「…スペシャルゲストの、お出ましです、ね」
佐々木さんが力なく笑った。



