「あらあら、物騒な言葉を呟いちゃって」


「てめえら以外、こんなことできるやつ居ねえだろ」


「そうよ。あたし達がしたのだもの」


ほんと、ばっかみたいに真っ直ぐな男。


「そうと決まれば早いな」


「…捕まえるって?」



「あたりめえだろ!」


黒スーツの男たちが一斉に襲いかかる



…はずだった。





「…お姫様、相変わらず面倒なことしよるなあ」




ピタリと、椎田の動きが止まる。



「…組長」


奥からぬっと顔を出す、青山の組長に椎田の肩がぴくりと動いた。


「椎田、もういい。下がれ」


「ですが!」


「下がれと言っとる。聞こえんのか?」


「………失礼、しました」


にこりと満面の笑みを浮かべる、青山 葏忢。



「お前の狙いはほんまに千夏だけみたいやな」


「分かっているなら、今なにをすべきかも分かっているのではなくて?」


ははっ、と乾いた笑い声が廊下にこだました。


残り5分。


タイムリミットは近い。


分かっているのだろう。


分かっているから、彼は自身で姿を現したのだろう。


「…もう千夏とは関わらん」


「組長!」


「黙っとけ。…うちを救うにはこれしかないんや」


「…玲は!玲はどうするんすか!」


「居なくなったからこその強さをつけるしかねえんじゃ」


ぐっと椎田の手に力が入ったのが見えた、気がした。


「お話は終わった?」


「…言ったやろ。さっさと出ていかんか」


「ちゃんと証拠をとっておかなければ、言っていないも同然よ」


ビデオカメラをバッグから取り出す。



「これに向かって、宣言して頂戴」



そうあたしはニッコリ微笑んだ。