「何故?」


「玲の暴走を止められんのは千夏だけだからな」


「…暴走」


確かに今の玲には少し冷静さが足りないように思う。


人を使って敵を殴らせるなど、個人的にはよくわからないが。


「あいつが俺に殴れって言った目、まじで笑えねえくらいヤバかったしな」


それからあたしの目を見た。


「俺はこの組が解散しねえなら手ェ貸すけど」


「貴方に、ここを護りたいっていう気持ちはないの?」


かっかっと椎田は笑うと、首を振る。


「あるわ、それくらい。でも、俺にはそれだけやる能力なんかねえよ。出来んのは手助けくらいだ」


「自分の実力は分かってるのね」


「てめえに言われると腹立つけどな」



それでも、と彼は目を細め。


「玲にはあいつが必要だ」


「だから、血眼になって探しているのね」


少し疑問には思っていた。


青山ほどの大きな組となれば、千夏の代わりをつくることなど、造作もないことのはずだ。


しかしこの組は彼女を探している、あらゆるものを駆使してまで。


この組、というには正確ではないかもしれない。


玲が。


人を動かして探しているのだから。