「和佳菜さん、ずっと待ってたんですよ」
絶対に。
絶対に怒っていると、思ったのに。
彼はそんな表情ひとつ見せずに、ふんわり微笑む。
「ごめん、なさい」
「本当にそうですよ。どれだけ自由人なんですか。自由人は、彗汰(けいた)さんだけで充分ですよ」
久しい名前が聞こえた。
尼崎 彗汰(あまがさき けいた)。
あたしにとても厳しく、だけどとても対等に喋ってくれた数少ない人の一人だ。
「彗汰は?」
「さあ?また旅をしてるんじゃないでしょうか」
見るところ、彼の姿はない。
陽太の言う通り、また自由に旅をしているのだろうか。
彼にもまた、会えたらいい。
そして、謝罪とお礼を。
彼の目を見て言えるようになりたい。
「改めて聞きますよ。俺が怒っているように見えますか?」
「全く見えない」
だろ!俺ら待ってたんだからな!
色々な声が周囲から響き渡る。
でしょう?と彼も続けると。
「怒ってませんよ。俺らも仁さん同様に和佳菜さんを待っているって決めたんですから」
「どうして、そこまで…」
彼は少しだけ考えるような仕草を見せると。
「聴いていませんか?」
と、あたしに問いかけた。
「なにを?」
「仁さんが和佳菜さんがイギリスに行くことになった時、俺らに言った言葉を」



