「白い仮面をした、悪魔?」
なんだそれは。
悪魔といえば、黒くて触角が生えた、物体。
人物…?とは少し違う気もする。
「それで?」
「あ、でも、直ぐに中止しろって連絡がその場で来たの。だから知ってるのはあたしくらい」
だから、千夏ちゃんなのか。
その出来事が関係している場合、電話の相手は、余程焦っていたのだろう。
青山組の頭、要は1番偉い人間に助けを乞うくらいなのだから。
青山組は西を陣取っている暴力団だ。
同等、もしくは立場が上でないと、対等に話すこともままならないはずだ。
「電話の相手は」
「分からない。ただ凄く頭が気を遣ってたから、年上だと思う」
日本だと銀深会が対等だけど、立場が上の人間なんていない。
青山を操る影で、偉い人物がいるか。
もしくは。
ぶるぶる、と頭を大きく横に振った。
そんなわけがない。
あたしの考えすぎだ。
ちょっと一緒にいる時間が長すぎたんだ。
だから、もしかしたらマークが、なんて考える訳で。
外国にだって大きな闇組織は山ほどあるし。
考えすぎだ。
だから。
だいじょうぶ。
「和佳菜ちゃん、…大丈夫?」
「あ、平気平気。なんでもないの」
こんなところで怖がってはいけない。
彼女はあたしと同じように人の気持ちに敏感だ。
ただでさえ弱っている彼女に、不安要素を話すわけにはいかなかった。
とはいえ、最低限ことは聞かなければいけない。
「じゃあねえ、改めて。千夏ちゃんはどうなりたいの?」
「そんなこと、言える状況じゃないよ」
「じゃあ、そういう状況になったら?」
「そんなの、…ならないよ」
「…じゃあ、単刀直入に聞くね。青山を抜けたい?」



