「敵わない?何故?」


「別に?気にすんなよ、“か弱いお姫様”」


「本当、憎らしい」


「お前は、それでいいのか?他に聞きたいこととか」


それでももう一度、じっとあたしの目を見つめたけれども、あたしに迷いなんて無かった。


「あるわよ、たくさん。でも敢えてこちらをきくわ」


あるけれども、まずは。


千夏ちゃんの問題を解決しなければいけない。


「なんでだ?」


「そこには少なからず、あたしが絡んでいるはずだから」


恐らくは、マークの差し金。


それか、青山組の一件で千夏ちゃんが問題を起こしたかの2択だが。


この状況は、間違えなく後者だろう。


あたしのことなんて、どうにでもなる。


だけど他人のことは、どうにもならないことが多いのだ。


何かあってからでは遅い。


同じ過ちは二度と犯さないの。


グッと眉根を寄せる仁に。


「お願い」


あたしにはこれしかないの。


やがて小さくため息をついた仁は、呟くように言った。


「千夏は今、簡単に言えば、青山で立場をなくして、殺されそうだから保護してる」


やはり。


それから彼は、眉根を下げて。


「まずは9月のあの日の話からするか」



そう、静かにあの日の話を始めた。