「仁、どこに行くの?」
「秘密」
秘密、なんて、誤魔化して。
何も教えて貰えずにただ、彼の隣に座っている。
そうして、どれくらい経っただろうか。
随分と山の方に入ってきたようだ。
相変わらず場所はわからない。
その時唐突に。
「和佳菜、星は好きか?」
と聞かれた。
「星…?」
そう言えば、日はとっくに暮れていた。
もう夜だ、しかし。
「好きだけど、見えないわよ?」
本日はあいにくの雨。
綺麗なはずの星は、雲に隠されて、あたし達の目には映らない。
「大丈夫、晴れるから」
「なに?予報でも見てきたの?そんなに当たるものでもないのよ?」
「大丈夫、当たるから」
なんの根拠があって、と訊こうとした瞬間。
雨が止んだ。