「お久しぶりですね。お嬢様」


「気持ちの悪い呼び方はよしてくれる?吐き気かするの」


「これはこれは、失礼いたしました。マーク・スティーブンの1番近い存在である水島 和佳菜様」


やはり調べてきたか。


「残念ながら、あたしよりも近い人物は他にたくさんいるわ」


「どなたでしょう?」


「そこにいる佐々木さん。彼もあたしよりもマークに近しい人物のひとりよ」


若干の疲労がみえる佐々木さんの方は決して見ずに、あくまでも彼を見つめた上で佐々木さんを例に挙げた。


「そんなわけないでしょう。嘘は大概にしてもらえませんか?」


「寧ろ、もうしばらく連絡さえとっていないあたしがどうして近しい人間になるのかが分からないわ」


マークにとってあたしは確かに特別なのかもしれない。


だけど、だからといってあたしが今のマークを知っていることにはならない。


この人は少々頭のネジが緩いのだろうか。


考えたならば分かることなのに。



「どうであれ、貴女がマークにとって1番であることに変わりはない。でもまあ、残念ながら、その佐々木様にはここで散って頂きますがね」


「散る…ですって?男を10人立ち向かわせても、私に勝てる者は居なかったのに?」


「こんなのただの肩慣らしですよ。本番はこれからです」


ニヤリとなにやら余裕そうに笑った瞬間。



何かが目前を横切った。