真夜中。
パリン、とガラスが割れた音がした。
「なに?」
二階の自室で眠っていたあたしはその音で目を覚ました。
なんのことか分からなくて、ただグラスを割っただけかもしれない。
それでもどこか胸騒ぎがして。
「何もない、大丈夫」
そう言い聞かせながら、そっと階段を降りて。
BARを覗くと。
「和佳菜様っ…!」
そこには大勢の男が、揉み合っていた。
というか、なぎ倒されていた。
「お怪我はありませんか?」
と言われてもなんのことだか分からない。
慌てて駆け寄ってきた佐々木さんにあたしが少し困った顔をすると。
「どこか怪我されたのですか?」
と聞かれたので焦った。
「いいえ、怪我は全くないわ」
それはよかった、と胸を撫で下ろした佐々木さんに。
「この人たちは?」
と聞くと、佐々木さんの顔つきが変わった。
「銀深会の者です」
「銀深会…」
思ったよりも遅かったわね。
銀深会の者と聞いた瞬間に誰の仕業か、予想がついた。
「いやあ、さすが佐々木さんだ。こんな巨漢を10人もたおすなんて」
拍手をしながらゆっくりとした足取りで歩いてきた男。
一輝、この人だと。