「…相模 千夏。年齢は17歳、若宮高校に通う高校2年。5歳の時に両親が亡くなり、青山組の組長夫婦に引き取られる。よって今は、青山組の嬢」
「ちょっとストップ」
「はい、和佳菜さん」
先生が生徒にかけるみたいに、どうぞって、手を出したので。
はい。瑞樹先生、と言ったら馬鹿にするなと笑われた。
「青山組の組長の名字は青山のはず」
「そうだけど」
「じゃあ、何故養子には入らなかったのかしら」
彼女は、養子になれる人間であるはずなのに。
「…噂によれば、父親の親戚が預かったことになっているから、らしいけど」
一度黙った瑞樹が、呟くようにそう言った。
「預かったことになっている、とは?」
「さあ?詳しいことは知らないけど、子供を嫌がる人も少なくないからね、ましてや他所の子。子供が好きじゃなきゃやっていけないと思うよ」
彼はそう言うと、じゃあ続けるよ、と言って息を吸った。
「俺が知ってるのは、相模はなんか和佳菜みたいってこと」
「あたしみたい?」
それって褒めているのかしら?
「そ、思慮深くて、頭の回転が早い。相模の顔を知ってる人は多くても、その性格は誰も知らない」
「関わっているなら、分かるのではないの?」
なんでいえば、呆れたように視線で抗議された。
「あのね?相模はな、人によってコロコロ性格を変えるから、どれが本性か分からない奴なの」
たしかに、素晴らしく切り替えが早い人物だとは思った。
「そうやって、相模をどんな女か調べてたら和佳菜の名前が浮かんだ」
「どうして?」
「…相模がどうしても始末したいとボヤいてたのが和佳菜なんだって」
…始末、とは。
「殺したいってこと?」
「ああ、…うん。とっても直球で言うと、そうかな」
曖昧に微笑んだ瑞樹に、うーんと唸ってみせた。
「さ、じゃあ次は和佳菜の番。俺はあらかた喋ったんだから、ちゃんと話してよね」
ギラリと、一瞬だけ光った目にあたしは曖昧に笑うと。
「あたしはね……」
マークにこの情報が渡ると百も承知で、全てを話した。



