ああ、だから瑞樹が居たのか。
あたしの本音を多方面から探ることが出来るように。
本当に虚しい事ばかりをするよね、マークは。
あたしもこの世界の住民ではあるけれども。
貴方ほど好きな人を信じられない人はあたしは知らない。
「…悲しいですね。佐々木さん」
「……マーク様は、愛しすぎて人を信じられない方ですから」
愛しすぎて、信じられない?
「どういうことですか?」
「愛が深すぎるが故の行為なのです。…分かってやってください」
そんなことを言われたって分からないものは分からない。
あたしはまだまだ人の心が分からないのだと、成長しなければならないのだと。
そう、ひたすらに感じた。
「あれ、今日はBARはお休みですか?」
真剣に話をしていて気がつかなかったが、もうあたりは暗くなって随分経つというのに、客は誰もいなかった。
「今日はお休みにしました。和佳菜様とゆっくりとお話をするつもりだったので。本当はお迎えもするつもりだったのですが、さすが坊ちゃん。女性の方をつけてくださったので、少し時間が空いてしまいました」
ははと苦笑いを浮かべながら、佐々木さんは立ち上がる。
「さて、夕飯にしましょうか」
そういえば夕飯まだだったと、あたしも笑った。