「気持ちの変化は?」
「そうですね。特に変わりはありません」
「と、いうのは?」
「さあ?それはご自分で考えてください」
本当に変わりはない。
嘘は何一つついてはいない。
ただ、一つ言うとしたのならば。
あたしの気持ちの変化を佐々木さんは恐らく感じとることは出来ないと思うのだ。
だけど、あたしはあえてこのニュアンスで話すことを決めた。
「マークにもそうお伝えください」
にこりと防犯カメラを睨みながらそう言った。
佐々木さんには伝わったのだろう。
少々表情が固い。
カメラの向こう側の人間にも伝わっているに違いない。
「ああ、それと約束は守ってもらいますよ。……琢磨がこの場所を知ったのはあなたの差し金ではないのですか?」
「何故、私が?」
「琢磨は獅獣の元総長です。あいつの人脈は広くて、あたしでも知らない人がたくさんいるのですよ」
にこりと微笑みながら、あたしは佐々木さんを見つめた。
「その中に私がいると?」
「そのように考えるのが妥当でしょう」
佐々木さんは、一瞬だけ大きく目を見開いて。
今度は佐々木さんが大きな声で笑う番だった。