蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



「入れ」


襖を開け。


「失礼いたします」


中に入ってきた人は。





「…あら、さっきぶりね」



にこりと妖艶に微笑んだ、あやみさんだった。


「…あ、はい」


慌てて頭を下げる。


「あやみ」


「分かっているわよ。この子をお家まで届けてあげるのよね?」


あやみさんは得意げにそういうと、瑞樹がはあとため息をついた。


「…家の近くで十分だよ」


「あらそう?ご主人様の希望であれば、それでいいけど」


それからあたしに再び目を向けた彼女は、ふふっと少女のように笑い。


「じゃあ行きましょか。…ああ、でも着替えてきてもいい?」


あやみさんは着物姿だった。


これは歩きづらいに違いない。


「…はい。どうぞ」


「雅。奥貸して」


奥には襖があり、どうやら部屋があるらしい。


「いいけど…着替えは?」


「持って来るわよ。向こうで着替えたら何かと面倒でしょう」


「…なるべく早くしろ」


「そうする為にここで着替えるのよ。じゃあ、失礼します」


そう言って出て行った。


「さっきも思ったけれども。組に女性は珍しいわよね」


素直に思ったことを告げると。


「あいつは女だけど、かなり強いから。男の1人2人なら十分だ」


それは一向に有り難いのだが。


「誰かの彼女とか、お嫁さんとかではないの?」


あたしが聞きたいのはそちらだった。


「あいつはそういうんじゃない、組員だよ。たった一人でこの世界に入ってきた。怖くてやべえやつだ」



「なんか言った?」


ふと見上げればあやみさんがこちらをにらんでいた。


いや、どちらかといえば、…瑞樹を。


「いや、なんでもない」


まずいと思ったのか、表情を硬くした瑞樹をみて、3人で笑った。