「じゃあ、俺と同士だね」
にこりと微笑んだ瑞樹の手を、仁はにこやかに笑って見なかったことにした。
ああ、やはりまだ疑っている。
疑念は一度持って仕舞えば、なかなか消えてはくれない。
「本当にそろそろ帰りたいのだけど」
あたしができたことといえば、さりげなく話を変えたことくらいだ。
早く、この気まずい雰囲気から逃れたくて。
とはいえ、帰りたいということも、事実だった。
もう日がくれたのだろう。
あたりは真っ暗になってしまっていた。
「そうだな。俺が送っていきたいところだけど、今は抜けられないし」
うーんと唸った瑞樹と、黙って何も言わない仁。
「…どうする」
「しかたがないね」
舌打ちをした瑞樹は、携帯電話を取り出して、どこかに連絡を取ると。
「来い」
とだけ言って、電話を切った。
「じきに来るから、ちょっと待ってて」
いや、全然待つことは構わないのだけど。
「一体誰を呼んだの?」
それも、たった一言でここがどこかも判断してしまうような人。
「さあね。来たら分かるよ」
ニヤリときみ悪く笑った瑞樹はそれ以上何も言わない。
相当察しが良いか。
それとも……。
その時。
トントン、とノックがした。



