「なんでよ!傷つけたのは貴方の方でしょう?」
「和佳菜、落ち着け」
「落ち着けるはずがないじゃない!」
どうしてそんなことが言えるの。
瑞樹にどう言われても、落ち着けるはずがない。
あたしのたったひとつだけの要求を、貴方はどうして跳ね除けるの。
「お前を傷つけたからこそ、責任を取る」
「いらないわよ、そんな責任感」
「一輝は必ずお前を追う。狂った父さんの召使いはあいつだからな」
「だから、そんなことは知らないって」
「知らないじゃ、済まされねえんだ」
…馬鹿みたいに凛としていて。
その目は真っ直ぐで。
闇に染まったはずの“可哀想だった目”は。
そんなカケラ、ひとつも見せずにあたしを射抜く。
「お前を命かけて護るから」
「…好きにすれば」
どうしてあたしは断れなかったのだろう。
なんて、もう答えは知っている。
だけどその答え合わせをするのは、…貴方があたしをちゃんと守ってくれた時にしておこう。



