「…なに?仁」
仁の予想外の反応に少々驚いたのか、小さく声をすぼめて瑞樹は聞いた。
「距離が近すぎねえか?和佳菜は知り合いの姪って聞いたけど。さっきの感じだと、お前達の方が先に出会ってるよな?」
……本当に馬鹿。
分かってしまう仁も仁だけど、軽率な行動をした瑞樹も悪い。
あとで縛り上げてやる。
「どちらも本当よ」
「和佳菜…」
「あたしの話なんてどうせ信用しないのだろうけど、一応言っておくわ。…雅は、あたしの叔父さんと先に知り合いなの。それからそれを関係なく、あたしと雅が出会ったの。叔父を知ってるって聞いた時には驚いたけどね」
「そうなんだよ」
危ない…危うく“瑞樹”っていいかけたわ。
知ってはいる。
ただ順番は逆だ。
「本当に?」
「裏の世界の人間は疑うのがお得意ね。でも、本当のことであるから、あたしも嘘がつけないわ」
嘘よ、嘘。
大嘘。
嘘は大嫌いだけど。
もう嘘をつく以外に手段がなかったの。
組長の前ではまごついたけれども。
貴方の前じゃ、まごついたことも全て、見破られてしまう気がして。
最初から嘘をつく以外に手段なんか考えていなかった。
本当は嘘なんかつきたくなかったのよ。
だけど、最初に嘘をついた仁が悪い。
父親の為にあたしと仲良くなっていたなんて、馬鹿をしている貴方が悪い。



