「あれは危険だ。組長のお気に入りだから位は上だが、俺を敵視してるせいで敵が多い」


「それはわかったけれども、どうしてあたしにそんな話をするの?」


もう関わるつもりはないのだ。


銀深会の門を叩いたあの時から、もう再会する運命は決まっていたようだったけれども。


久しぶりに会えただけで充分。


目の前に座っているだけで充分だ。


…なによ、あたし馬鹿みたいじゃない。


この人は、あたしに散々な言葉を投げ掛けて、追い出した張本人だっていうのに。


なんで、なんで。


「組長はまたお前を狙う可能性があるからな。お前に興味持っちまった。多分、近いうちに近づいてくると思う」


「そうさせたのは貴方だし。貴方のせいよね?」


「そ。まあ、大丈夫。俺が守るから」


よしよしって頭を撫でて、瑞樹は笑った。


……こいつもこいつで意味が分からない。


「…ええ。頑張って頂戴」



「お姫様。全力で護らせていただきます」


雰囲気を例えるなら、紳士。


この男が紳士に見える日が来るなんて思っても見なかった。


「そういうのいらないから!」


「あー、照れちゃった」


クスクス笑う瑞樹が憎たらしい。



「雅」


冷たい声が響いた。




なんだか、さっきと同じような光景が広がった。