何故って、それは。



「…和佳菜?」


その声は懐かしいが、あたしの期待していたものとは少し違った。

振り返りたくない。

あたしが一方的に投げつけた言葉でたくさん傷つけたのだから。

合わせる顔がないはずなのに。

気がついたらここにいた。


「なあ、和佳菜だろ?お前を俺が間違えるはずがねえんだよ」

そうよ、和佳菜よ。

「こっちむけって!」

無理やり振り向かせた、その人は。




「…綾」



1年ぶりで身長はかなり伸びて、大人っぽくなって。

顔の形は丸みがとれて、シュッとして。

どことなく幼い顔つきはそこにはなかった。

1年はこんなに人を変えるのか。

「お前、なんでこんなとこにいんだよ。イギリス行ったんじゃねえのか?」

「…行ったよ」

「じゃあ」


「帰ってきちゃ、悪いの?」


そんな風に聞こえる。

多分、そんな風に言っている自覚が、綾にはあると思う。

「悪くはねえ。だけど、タイミングが悪い」


タイミング…?