眉根を下げて、笑った瑞樹は。


「なんのこと?」


「あたしの目は騙せないわよ。その子、知り合いなんでしょ?あんた、会議の時には顔に出ないけど、終わった直後は表情が柔らかいのよね」


誰が見ているか分からないのよ、警戒も自覚もしなさい。


けらりと笑ったあやみさんは、それからあたしを見て、柔らかく笑った。


「初めまして、斎藤 あやみです。あんたは?」


「ええ、と…」


「知ってるだろ。マークの女だったやつだ」


口を挟む瑞樹には少し睨んだだけで、特に反応せずに、あたしに目を向けていた。


「あたしはあんたには聞いてないの。ごめんね、別にマークに興味なかったからあたし、あんたの事件覚えてないんだよね」


たしかに、興味を持たない人もいるんだろう。


「水島和佳菜です」


彼女の目を見て伝えると、彼女は満足げに頷いた。


「和佳菜ね。覚えた。一応あたしの名前は覚えておきなさい。数少ない雅の仲間なんだから」


「仲間ってどういうことですか?」


「仲間は仲間よ。あんた、仲間の意味知らないわけないわよね?帰国子女でも、分かるよね?」


「意味は知ってます。でもここはみんなが仲間では…」


ああ、そういう意味。


彼女はあたしの言いたいことを理解したようで、ふっと鼻で笑った。


「雅側についているってこと。この中でも色々とあるのよ」


その色々を聞きたいのだけど。


そう思って口にしようとすると、そろそろ行くぞ、という瑞樹の声が聞こえてきた。


「じゃあね。マークの元恋人ちゃん」


あたしはニコニコしたあやみさんにそっとお辞儀をしてから、瑞樹にあたしの背中を押すように歩かされた。