「お前、誰だ」
呆然と立ち尽くしていたせいだろうか。
気がつけば、強面の男の人たちがあたしを囲んでいた。
20人はいるだろう。
「物を届けに来たの。組長のところに連れて行ってくださらない?」
「ものとはなんだ」
「さあ?あたしが組長に直接手渡すから、貴方に言う必要はありませんよね」
男の1人の目を見つめながら話すと、僅かにそいつが目を見開いた。
が、その目はすぐに怪しく細められ、広角は静かに上げられた。
「随分と威勢のいい女だな」
「そうですか?普段と変わらないのですが」
だってあたし、もっと怖い人にたくさん出会ってきた。
日本の暴力団の組員だって、普通の人が出会ったならば怖いのかもしれないけれども、生憎あたしは普通じゃない。
貴方たちなんか、あたしにとっては大したことがない分類に入ってしまうのよ。
「…あんた、ただもんじゃねえなあ」
何を感じたのか、目の前の男が不気味に笑った。
「どこの族だ?」
「どこにも属してないわよ」
「嘘をつけ。どっかのスパイだろ?だから、組長に会おうとしてんだろ」
「別に嘘なんかついてないわ」
「じゃ、その物とやらを見せてみろよ!」
手首を強い力で掴まれて、思わず顔をしかめた。
「煩いわね」
「ああん?」
仲間がいるから威勢のいい男。
馬鹿みたい。
きっと貴方は仲間が居なくなったらあたしから、尻尾を巻いて逃げ出すのでしょう?
その証拠が貴方の足。
ガタガタ揺れて、あたしが少しでも押したのなら、倒れてしまいそう。
「本当に馬鹿みたい」
「なんだと?」
その、時。
「静かにしろ」