それでもきっと確信は何一つ持てないこともまた事実。
それも相手は何者か分からない。
ならばどうしてここにあげた?
「一つ、お願いをしてもいいでしょうか?和佳菜様」
きゅっと、蛇口をひねった音が聞こえた。
「なんでしょう?」
この部屋から一瞬だけ、音が消えて。
再び聞こえた音は。
「おつかいに、出て欲しいんです」
「…どうして、こんなことに」
ため息しか漏れない。
何故って、それは場所が、東側で最も大きい暴力団とされる……。
銀深会、だから。
『これを和佳菜様に渡して欲しいんです。会長に、直接』
佐々木さんから握らされた“これ”とは、琢磨があたしに授けたものではない別の白いUSBメモリ。
『あたしの質問には?』
『キチンと帰って来られたのなら、話しますよ』
「こんなもの、自分で渡した方が何倍も早いというのに」
勿論、そうも言ったが、……半ば強引的に説得され、仕方なくここに足を運んだのだった。
日本庭園がある、和風の雰囲気が漂う、言ってしまえば、豪邸。
ここにとてもヤクザがいる場所とは思えない。