「あの、佐々木さん」


「なんでしょう?」


あたしの顔は見ずに、洗い物を始める佐々木さん。


琢磨の残したコップを処理することは至極当然の流れだとは思うが、全くこちらを見ない。


まるで、あたしの顔をわざと見ないようにしているように思えてならない。


多分、理由は。



「何故、琢磨をここに入れたのですか?」



あたしにこのことを聞かれたくなかったからだと、思う。



「…お客様は店内に入れるのが当然でしょう?」


「彼は客は客でも、商業目的の客ではないことくらい、佐々木さんだって分かっていたでしょう?」


だって貴方はあたしをここに呼んだじゃない。



多分、見た瞬間に分かったのだろう。



琢磨があたしに会いに来たのだと。