「俺は今銀深会の組員をしてる」


「いつ、から…?」


「だいぶ前から」


え、前ですって?


「あたしのせいじゃないの?」


「なんで和佳菜のせいになるんだよ」


「あたしがマークと関わったから…」


そうしたら彼は柔らかく笑って。


「ばーか、んなわけねえだろ。ずっと前から俺は和佳菜も和佳菜の母さんもみんな裏切ってた」


琢磨は暴走族に入ってもヤクザなんか絶対やらねえなんて、よく言っていた気もする。


琢磨の暗い顔にあたしは静かに笑顔を見せた。


「なんとなく、そんな気はしていたの」


だってあの琢磨だよ?


怒らせると誰よりも怖くて。


暴力でものを解決してしまう琢磨が。


暴力団に入らない方が変だ。


「だけどお前は暴走族も暴力団も嫌いだろ?」


「そうよ。誰かさんみたいな人を貶める頭脳戦を強いる人なんか普通に嫌い」


「お前、今それを言うか?」


ここがマークの縄張りだからか琢磨は焦っていたけれど、あたしは琢磨という心強い味方がいるから平気。


それに護身術くらいなら出来る。


なにもかも置いていくことになるだろうけど、逃げることならできそうだ。


できるならそうはしたくないから、あくまでも最終手段ではあるけど。


「でも、俺はお前に嫌われたくないし、お前を守るのをお前の母さんから任されてる。そのためならなんだってする。やる。だから」



「待って、琢磨。どこか勘違いをしているんじゃないの?」