蒼の花と荒れる野獣Ⅱ




来客…?


この場所を知る人はそうはいない。


そして、あたしに会いに来る人なんかもっといない。


一体誰が…?





「和佳菜様?起きていらっしゃいますか?」


佐々木さんの言葉にハッとした。


「起きています!ただいま向かいます!」


疑問に思いつつ、着替えて、カウンターへと向かった。


あたしがお店に出てくると、佐々木さんは安心したように笑って。


「いらっしゃいましたよ」


と目の前のカウンターに座った男の人に声をかけた。




その人は、振り向いて、……笑った。


「よう」


聞き慣れた声。


思わず我が目を疑った。


ブラウンのコートに紺のズボン。


ネクタイがコートの下から見えるからきっと下にはスーツを着ているのだろう。


そんな格好が似合う人なんてそうはいないけれど……嘘でしょう?


「琢磨!」


これは夢?


「うっわ!いきなり何すんだよ」


「馬鹿!うるさいわね!あんたが勝手にいなくなるから心配したんでしょうが」


「それは悪かったから、抱きつくなって。…って、お前泣いてんの?」


「本当にうるさいわ。…そこ突くから女の子に振られるんでしょうが」



「それを振られる理由に言い換えるなよ」



「言い換えるわよ!…ああ、本当に良かった」


安心したせいなのか、涙が止まらない。


この1年と少し。


ずっと連絡さえ寄越さない貴方がずっと心配だった。


顔に出さないように必死で笑っていたけども。



辛くなかった日はない。