「そんなに不満ならどうして追い出さないの?」
彼は獅獣の副総長だ。
直接ここを動かすことができなくても、仁に進言することだって、周りを味方につけて、彼女を追い出すことだってできるはずだ。
だけど、今の綾はそれをする様子はない。
「俺がどんなに嫌ったって、仁を救ったのに変わりはねんだよ。だから、なんも言えない」
「仁を、救った…?」
「そ、仁は不覚にもあいつのお陰で今があるようなもんなんだ」
もっと分からない。
彼女はどうやって、ここにいる権利を手に入れたのかも。
仁を救ったのも。
それを見て、綾はあたしの顔を覗き込む。
「聞くか?お前がまだ俺らと関わる前の獅獣の話を」