しばらく黙った貴方が放った言葉はほんの少し。
[ごめん。ワカナ]
「そういうことを聞きたいんじゃないの!」
誰が謝れと言った?
謝るだけで解決しないことだってたくさんある。
理由を説明しなければならない時だって必ずある。
そうやって逃げて、あたしが納得すると本当に思っているのだろうか。
[ごめん、ごめん…。ワカナ。僕は1度目も2度目も。その理由を君に話すことは出来ないんだ]
下を向いて、あたしとは決して目を合わせない。
その声は異常に苦しげで、見ていて辛かった。
「何故?」
[“ あの方 ”の望みは絶対だから]
“ あの方 ”…?
「ねえ、マーク。あの方って…」
[ワカナは知らなくてもいい話だよ。だけど、僕は君を守るためにここに来たんだ。まだ少し時間がかかるけど、必ずあの方の影から逃げるから。だからその時には、僕の隣にいてね]
はぐらかされた気がしないでもない。
彼は優しくあたしに微笑んだけれども、その瞳はゆらゆらと不安そうに揺れていて。
肩も小刻みに震えているような気がする。
「マーク、大丈夫なの?」
これは演技じゃないとあたしは本能で悟った。
あたしの目の前にいた貴方は、あたしに対して弱った姿を一度も見せたことがなかったから。