「マーク様。今日は会うだけ、と言っていたじゃないですか」


そこに現れたのは今日は出られないと言っていたはずの瑞樹だった。


「いやあ、愛しい人が目の前にいたら、連れて帰りたくなっちゃうでしょ?」


「なってもやろうとしないでください」


瑞樹はそう言って、そっとマークからあたしを引き離す。


不満そうにマークは顔を歪める。

「たとえ君でも、僕の邪魔をするのは許さないよ」


瑞樹はため息をついて、困ったように顔をしかめた。


「なんでそうなるんですか。和佳菜はまだ獅獣とも完全に縁を切っていないし、青山組の一件だって片付いてない。だから今はやめておいてくださいとあれほど言ったんです」


どうやらあたしに会いたいとマークが駄々をこねたようだ。


周囲の人間が止められないほどに。



「どうしてもこっちで片付けなきゃいけないもの?」


「はい。そうじゃなければ、獅獣のやつら、イギリスの時のようについてきますよ?」


当然のように頷いた瑞樹…って。


「どういうこと?イギリスの時のようについてくるって」

「え、和佳菜……様知らなかったんですか?何人か獅獣の人間がイギリスに行って貴女様を見守っていたんですよ?」


知らない。

そんなことを誰も言わなかった。