「あたしは貴方を許さない」


両手で突き放して、距離をとる。


「うん、いいよ」


「結構根に持つ性格だから」


ついでに睨みつけてやった。


「知ってる」


ふふっと笑う。


あたしじゃなくて、目の前の人が。


「ねえ、だから帰ろう」


どこに?なんて。


分かっている。


分かりきっている。


「貴方が苦しいだけよ」


「僕は苦しくないよ」


「あたしはもう好きじゃないのよ」


「いいよ。何度だって僕に恋に落ちさせてあげる」


それから、と息を継いだあたしを爽やかな笑顔で笑った。




「僕は君が好き。君を愛している。だから結婚してアメリカに戻ろう」





マークがそう、愛の言葉を囁いた。


ところが。




「すみません。そうさせるわけにはいかないんです」