「…何もない、わよ」


「嘘つけ。和佳菜だってこんなに分かりやすくしたら僕がほっとくはずないってわかってるんじゃないの?」


やりたくてやっているわけではないけどね。


まあ、そう見破られる事くらい想像できる。


「そんな察してアピールなんかあたしができると思う?」


「無理だね」


「でしょう?」


ケラケラ笑う。


表裏の比較的ない方であるあたしが、基本的にものをはっきりというあたしが、そんなことをできるはずがない。


「じゃあ故意じゃないってことか。余程余裕がないんだね」


「まあそんなところ。どちらにしたって瑞樹には関係のないことだから安心して」

じゃあね、と佐々木さんの作ってくれたパスタに申し訳なくなりながら、洗面台に皿を出すと。

ひらひらと手を振りながらその場を後にした。


「ちょっと!」



瑞樹の慌てた声には聞こえないフリをして。