だから聞きたかったのだ。
瑞樹ならきっと知っているから。
だけど、昨日の佐々木さんの言葉も引っかかるのだ。
『…彼は、坊っちゃん、私……そして』
はっきりと覚えている。
昨日だから、とかそういうことではない。
忘れられない口調だったのだ。
『…マーク様の、敵であるからです』
彼ははっきりそう言った。
敵、だと。
あたしが今お世話になっている人の、全ての敵だと。
そう言われた以上、どうすることもできなかった。
聞いたら訝しがるに違いない。
あたしは瑞樹に捕まっている。
ただし、その現状から逃れたいとは今のところは思わない。
あたしはアメリカに行く意思もないし、それ以上にイギリスに行きたくないのだ。
だから今はここにいたいのだ。
そのため、今のあたしにはここが大切な住処。
今、もし反感を買って追い出されたら?
住む場所も移動するだけのお金さえない。
ここはロンスタンダードのすぐ近く。
こんなところで追い出されたら、自分がどうなるかなんてわかりきっていた。