「南 和馬、ですか。さっきまでここにいたのですが」
そんな名前だったのか、と内心驚きながらそう答えると、佐々木さんの目が鋭くなった。
「お話、なさったんですね?」
誤魔化したことは途端に見破られた。
佐々木さんを侮ってはいけないようだ。
もとより侮る気は無かったのだけど。
「ええ、知り合いなので。たまたま会って、世間話を」
「どのような内容を?」
はぐらかすことは許さないらしい。
「どうしてそこまで気になさるのですか?」
「質問に質問で返すのはルール違反です」
ここはスーパーの一角なのに。
なんだか警察で取り調べを受けているようだ。
「大したことのない話ですよ。そこの野菜は安いとか、昔の仲間は元気かとか」
「失礼ですが、昔の仲間とは?」
あ、墓穴を掘った気がする。
そんなあやふやな内容を話したら、探られるに決まっているというのに。
「学校でつるんでいた仲間のことです」
顔には出さずに、上手く立ち回る。
ああ、元の感覚が戻ってきた。
「それは友達というのではないのですか?」
「さあ?あたしにとっては、仲間だったので。彼らは」
探られているその目がなんだかいい気はしない。
小さく息をつかれ、それから流石だ、と困った顔をされた。