「は?」

「謝罪とか、そんなのありきたりすぎて嫌」

綾が視線をあたしじゃないなにかにずらしながらそう言った。

「何よ、それ」

「俺も嫌」

「なに、仁まで。じゃあ、あたしどうしたらいいの」

彼らはその言葉を待っていましたと言わんばかりに、ニヤッと笑った。


「今までここを守り続けてくれて、ありがとうって言えよ」


仁があたしの真正面のソファに座りながら言った。


「そしたら、許したげる」



「…え」

あたしのわがままなのに。

貴方達の方が、ずっと大変でずっと辛かったに違いないのに。

なによ、謝罪は要らないなんて。

お礼を言え、だなんて。



なんで、なんでそんなに優しいの…?



「なんだよ、泣いてんじゃねえよ。こんなことで泣くとか馬鹿かよ」

「馬鹿じゃないけど?模試で1番だったことがあるもん」

「うわ、きもちわる」


「勉強好きなんだから、そんなこと言わないで」


「もっと理解出来ないわ」


「しなくていい」


空気を和らげるために気を遣った事くらいあたしだって分かっているんだから。


貴方達の優しさが身にしみて、涙が余計にあふれてしまう。