「いつから我慢していたんですか?」
「…まあ、少し前から、ですかね」
あたしから目をそらした佐々木さんを見た限り、その期間は長そうだ。
「我慢は禁物ですよ!急いで行ってきてください」
カートは持ってますから、と佐々木さんから半ば強引にカートを奪うとにっこり微笑んだ。
ありがとうございます、すみません。
彼の戸惑いには目もくれず、グイグイとトイレへ押しやった。
そんなに我慢させていたなんて、全く分からなかった。
すごい、さすが影で生きている人だ。
気を遣わせることを申し訳なく思ったのだろうが、我慢しきれなくなったらしい。
「あの!」
と、思ったら、佐々木さんが戻ってきた。
「なんでしょう?」
「さっき私を追い出したのは、ご自分が逃げるためでございますか?」
……え?



