暗い顔をしたあたしを感じ取ったのか。
眉根を寄せた佐々木さんにあたしは無理やり笑顔を見せた。
「まあ、そんなに軽い気持ちであそこにいたわけじゃないので」
「今まではどちらに?」
ああ、そうか。
この人は知らないんだ。
あたしが獅獣にいたことを。
仁をずっと待っていたことも。
「暴走族の倉庫で暮らしていました」
「そんな劣悪な場所で。こちらなら、もっと良い待遇ができましたのに」
「劣悪なんて、誰が決めるのですか?」
イラっとした気持ちが顔に出てしまったのかもしれない。
「すみません。お気を悪くさせたのなら、謝ります」
彼が申し訳なさそうに頭を下げたので、我に返った。



