蒼の花と荒れる野獣Ⅱ



暗い顔をしたあたしを感じ取ったのか。


眉根を寄せた佐々木さんにあたしは無理やり笑顔を見せた。


「まあ、そんなに軽い気持ちであそこにいたわけじゃないので」


「今まではどちらに?」


ああ、そうか。


この人は知らないんだ。


あたしが獅獣にいたことを。


仁をずっと待っていたことも。


「暴走族の倉庫で暮らしていました」


「そんな劣悪な場所で。こちらなら、もっと良い待遇ができましたのに」


「劣悪なんて、誰が決めるのですか?」


イラっとした気持ちが顔に出てしまったのかもしれない。


「すみません。お気を悪くさせたのなら、謝ります」


彼が申し訳なさそうに頭を下げたので、我に返った。