「今日はどこに行くんですか?」
「BARでの材料が切れてしまったので、それを買いにスーパーまで」
にしても、と言ってあたしをみた。
「今日の服は気合が入っておりますね」
にっこり優しい笑みを向けられて、思わず頬が赤くなる。
ダメだ、この人の笑顔は心臓に悪い。
マークとも仁とも違った大人な風貌。
照れることは許して欲しい。
「いつも、こんな感じですよ!」
今日の服は、黒いワンピースだ。
レースが袖や裾にあしらわれている、パーティにでも着て行くことが出来るようなものだ。
「こちらにいらっしゃった時は、Tシャツにスカートだったじゃないですか」
「そうでしたっけ」
あの日のことはよく覚えていない。
苦しくて、悲しくて、怒りばかり起こった。
それしか覚えていない。
「まだお辛そうですね」