「しないわよ」
「それはどうかな。マーク様相手に逃げようと画策してたから、素直に頷けないよ」
「もうしないわ」
「うん、そうして。じゃないと…」
彼が再び言葉をきった。
もう、しょうがない。
「…僕、君を殺さなきゃいけなくなるから」
だからしないでね。
彼は笑って、拳銃と、ナイフが装備されたベストを身につけて、その上からカッターシャツをライダースを羽織った。
「しないわ」
「それを僕は信じてる」
あたしの目を見て、作り笑顔ではなく、本当の彼自身の優しい笑顔で笑った。
「ご馳走さま。美味しかった」
「それはよかった」
あたしも丁度食べ終え、一階のカウンターから二階の自室に戻ることとする。
「気をつけて」
「うん、ありがとう」
彼が出て行くのをぼんやりと見送り、あたしも部屋へと戻った。



