「そう?」
「うん、今度会ったら聞いてみたら」
「そうね」
覚えている瑞樹の方がまだ優しいのかもしれない。
あたしにとってはまだまだ許せない相手に変わりはないけれども。
「あ、もうこんな時間だ」
おしゃれな壁掛け時計を見上げて、瑞樹が焦ったようにカウンターを出た。
「何か用事でも?」
「うん、任務」
「あたしのために動いていたんじゃなかったの?」
それもそうだけど…と彼は忙しなく動き回りながらそう言った。
「日本でやる案件は大体引き受けてるから、他にも色々やることがあるの。和佳菜はここから出なきゃいいから。マスター…佐々木さんと出かけるならいいけど、脱走でもしたら」
彼が立ち止まった。
言いたいことはわかっている。



