「やっぱり、美味しい」


「よかった」

瑞樹のホッとした顔に、あたしも頬を緩ませた。


味覚は変わらないのだなあ、と自覚した。


どれだけ相手のことを嫌いでも、その料理までをも嫌いにはならない。


あたしの性格上そうなのだと、やはり予想通りだった。




「ごめん、和佳菜」


何口か食べ進め、半分ほどなくなった頃。


突然の謝罪だったが、なんのことか瞬時に理解したあたしは小さく笑うだけにした。


怒らないでおくと決めたから。


「…あたしもごめんなさい。過去のことなんか引っ張り出してもいいことはないものね」


だからもういいよ。


表面上は許してあげる、貴方はまだまだ子供らしいから。


「…マーク様に会った時、その話はしなかったの?」


「出すつもりだったけれども、やめた」


どうして、と不思議そうに声を上げた瑞樹に、決まっているでしょう、と目を細めた。



「あの人、きっと覚えていないだろうから」