「遅くなりました」


涙を拭いて、何もなかった顔をして。


BAR Margaretの店舗であるカウンターの席に座った。

「遅い」

既に料理は出来上がっていて、テーブルにのっていた。

佐々木さんの姿は見えなくて、意図的に二人きりにさせたのだと感じた。


「…オムライスか、懐かしいわね」

トマトソースでにこちゃんマークのかかれたオムライス。

マークの側にいながら彼があたしを構えない時、よく2人に相手をしてもらったものだ。


瑞樹にはこのオムライスをよく作ってもらっていた。

あたしの好物で、瑞樹に作ってとせがんだことを今でもよく覚えてる。


「和佳菜はまだこれが好き?」


「食べてみないとわからないわ」


だけれど、なんとなく予想は出来ていた。


「いただきます」

ママから習った手を合わせてそう言う日本式のやり方。


丁寧ですごくあたし好み。


スプーンを手にとって、一口大の大きさにわけたライスを頬張った。