「私たちが生きているのは現在ですよ」


分かっている。


過去をいつまでも恨んではいけないことくらい。


それでもどうしても飲み込めない痛みを。


あたしはまだ吸収する術を知らない。


「…ありがとうございます」


それだけで佐々木さんはまだあたしがその言葉に素直に頷けていないと知ったのか。


「焦りも禁物でしょう。ですが、18でこの国を出た坊っちゃんはまだまだ子供なんです。精神年齢は日本を初めて出た時に止まってますからね」


それだけを、了承願います。


と、やんわりとあたしを宥めた。


あたしはと言えば、曖昧に笑っただけで彼を許すとも許さないとも言わなかった。


「では、行ってますので。着替えが終わりましたら、きっと坊っちゃんの料理も出来上がる頃でしょう」


そう言って、佐々木さんもこの部屋から出て行った。