「そうですね。すみません、気をつけます」


「それならいいですね。着替えを終えたら降りてきてください。カウンターに座っていたら、坊っちゃんが何か作ってくださいますよ」


「え?僕が作るの?」


「カウンターに座った相手には坊っちゃんが作る決まりでしょう?」


佐々木さんは優雅に笑う。


若干不服そうに顔を歪ませた瑞樹は、小さくため息をつくと。


「…いいよ。僕が作ってあげるから早く降りてきてよね」


そう言って部屋を出ていった。



「ありがとうございます」


頭を下げると、佐々木さんは困ったように眉根を寄せた。

「謝るのはこちらの方です。すみません、坊っちゃんが幼くて」


「幼いのはあたしの方です。過去の傷をいちいち掘り返していたって何も変わらないとは分かっているのですが…」


あたしが生きているのは何のため?



もちろん、被害に遭われた多くの被害者の方々のため。


それを深く自覚した切っ掛けを作ったマークや瑞樹に感謝すると同時に、未だに行っている全てのことに怒り以外には何も湧かないのだ。


まだきっと反省していないと思うから。



だから余計に腹がたつ。