瑞樹の牢獄…というほどには恐ろしくはないが、部屋に入れられた翌日。


佐々木さんが営業しているBAR Margaretの二階にある一室で生活することになった。


ここに住めと言ったのは瑞樹だが、提供してくれたのは佐々木さんである。


瑞樹が上から目線でものを言える資格はない。


「騙すつもりだったの?」


「んー、そうするつもりはなかったけど、結果的にそうなったから。さすがに僕、駆け引きの名人を騙す勇気ないよ」


「…あら?あたし、瑞樹に本業の話をしていたかしら?」


彼は一瞬グッと詰まると、朝から疲れるなあとため息をついた。


「…マーク様は周囲には漏らさないつもりだったみたいだけど、僕ら護衛だけにはお話くださってたよ。何かあった時、フォローしきれない部分が無いようにって」


何かあった時。


それは言わずもがな、彼女であったあたしがマークの側から離れなければならない時。


要は誘拐や、あたしの駆け引きの現場においての話である。