とにかく大きな通りに出なきゃ。
そんなことを思いながら重たいキャリーケースを引いて大きな道路を目掛けて走った。
不幸中の幸いが有るとすれば、あたしの足がまあ早いということ。
少なくとも、酒の匂いを漂わせる奴らがすぐ追いつけるほど遅くはない。
大きな通りには出た。
けれども。
もちろん宛なんてない。
どうしよう、どこへ向かおう。
琢磨達12代目の住処だったdogsは、ロンスタンダード街を挟んだ反対側に位置しておりここからだと2キロはある。
1番近いのは、記憶上あたしが昔住んでいた家だけれども、解約してしまったし、なによりきっとそこにはもう他の人が住んでいると思われる。
倉庫に戻る気はない。
だとしたら……。
「おい!その小娘!」
まずい、もう来た。
その時。
「こっち」
だれか懐かしい声とともにあたしの右手が引っ張られた。